MINO ARATA
To Still the Tremors
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MINO ARATA
To Still the Tremors
都心に立ち現れる工事現場の仮囲いは、都市の秩序を一時的に遮断しながらも、日々の風景に埋没していく装置です。本作では、その仮囲いの前に佇む一匹の黒い犬と子犬の姿を通じて、私たちが見過ごしている“揺れ”に目を向けようとしています。犬は、人間が知覚しきれない微細な変化や兆しを感じ取り、ときに威嚇することで、越えてはならない境を形づくります。その行為は、合理性や制御が中心と思われていた場所に、まだ不確かで揺らぎ続ける領域があることを示唆するものです。写真はすべて白黒反転され、仮囲いと写真が互いに反映し合うように配置されます。タイトル《To Still the Tremors》には、そうした見えない揺れを静かにすくい取り、私たちの足元に広がる境界の存在をあらためて見つめ直す契機としたいという意図が込められています。
モデル:鈴(りん)、ぼたん
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三野新
写真家、舞台作家。福岡県生まれ。現在東京都と神奈川県を拠点に活動。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。周縁化された場所やもの同士の残された記憶や風景を繋ぎ、様々な「ここ」と「あそこ」の中間項を見つけ前景化させることをテーマに研究と実践を行う。主に写真・映像メディアを元にフィクションを作り、それを自分自身や他者の身体、様々なメディアを通して発表するなど、領域横断的に活動を行っている。
主な個展に、2023年「外が静かになるまで」(十和田市現代美術館ほか、青森)、2021年「クバへ/クバから」(ANB Tokyo、東京)。2025年 TOKAS二都市間交流事業<ソウル>プログラム派遣クリエイター、2021年 ACCニューヨーク・フェロー。