KOYAMA TAISUKE
drifts
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KOYAMA TAISUKE
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約160年前のある日、浦賀沖に来航したペリー艦隊の乗組員が1本の瓶を船から海へと投げ捨てた。それがいつどこの浜で始まったのか、正確な記録は残されていないが、当時の人々は海へと投棄された外国の瓶を海岸で拾い集め、珍しいものとしてコレクションしていたという。今回の制作は、SENSE ISLAND 2022の現地調査で訪れた猿島のビーチで、夕暮れ時のわずかな時間に両手で持ちきれないほどのガラス片を採集したことから始まっている。シーグラスと呼ばれる漂着ガラスは、およそ20年から40年、時には100年以上かけて海を漂流し、やがてどこかの浜へと流れ着く。小山はリサーチの過程で横須賀から久里浜までの浜辺や海岸を巡り、数日間のビーチコーミングで約5kgのシーグラスを採集、その表面に刻まれた擦過の記憶を撮影した。本作「drifts」は、今も海中を漂流し続ける不可視なガラス片を知覚するために、海を見晴らす三笠ターミナルでは建物全体を使ったステンドグラスのようなインスタレーションとして、また対岸の猿島では、海を見下ろす展望台にテーブルクロスとして展示している。
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小山泰介
写真家/TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH代表。東京出身。2014年から4年間、ロンドンとアムステルダムを拠点に活動し、現在は東京在住。生物学や自然環境について学んだ経験を背景に、実験的なアプローチによって制作された写真作品や映像作品、インスタレーションを発表している。近年の展覧会に、NEW ANXIETIES (N/A & FF Seoul、ソウル、2025)、スイス・日本国交樹立160周年記念写真展SUPER NATURAL!(YAU CENTER、東京、2024)、個展 UNIVERSAL FLOWING(THE FLOW、大阪、2024)他、国内外の芸術祭や美術館、ギャラリーなどでの展覧会多数。2013年度文化庁新進芸術家海外研修員。女子美術大学非常勤講師。